失業保険とは、職を失った人が再就業するまでの間に支給されるお金のことです。期間工でも条件さえ満たせば受け取れますし、満たすべき条件はそう難しいものではありません。
本記事では失業保険でもらえる金額や期間、受け取るまでの流れについて解説します。記事を読みながら準備を進めていけば、失業保険をスムーズに受給できるでしょう。
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そもそも失業保険とは?
失業保険とは雇用保険の一種で、職を失った人の当面の生活や、次の仕事探しをサポートするための給付金のことです。転職や就職をするにもお金はかかります。生活費の不安があれば、仕事探しにも集中できないでしょう。
「職を失ってしまったけど、また働きたい」と思っている人を支援する公的制度が、失業保険です。
期間工は失業保険でいくらもらえる?
期間工の失業保険は、いつまでの間、どれだけの金額を受け取れるのでしょうか。これは人により異なりますが、参考として、次のように考えておくといいでしょう。
【もらえる金額】
- 期間工として働いていたときの給与の50%~80%
【もらえる期間】
- 基本的に90日間、就職が困難な人なら150日間
失業保険の受給資格
失業保険には「受給資格」というものがあり、これらを満たしていると受給できます。条件はそう難しいものではありませんが、知らないと受給開始までに時間がかかったり、そもそも受給できなくなったりするかもしれません。
過去2年間で、通算12ヵ月以上の被保険者期間があること
失業保険を受給する1つ目の条件は「過去2年間で、通算12ヵ月以上の被保険者期間があること」です。この期間は通算12ヵ月間ならいいので、「3ヵ月+9ヵ月」「仕事をしていない期間を挟んで半年ずつ」などでも構いません。
被保険者期間とは、1ヵ月に11日以上働いている期間のことです。期間工は月に20日は働いているため、「期間工として12ヵ月以上働いていた人」は問題なく条件を満たせます。期間工で12ヵ月働いていなくても、退職日からさかのぼって2年間の被保険者期間が通算12ヵ月あれば大丈夫です。
働く意思と能力があること
失業保険を受給する2つ目の条件は「働く意思と能力があること」です。失業保険は「また仕事をしたいと思っている人を支援する制度」なので、働く意思や能力があることは必須条件です。
「働くつもりがない」「家事に専念する」「次の就職が決まっている」「同一事業所で就職、離職を繰り返しており、再び同一事業所に就職の予定がある」などの場合は、受け取れません。
積極的に求職活動をしていること
失業保険を受給する3つ目の条件は「積極的に求職活動をしていること」です。失業保険をもらうには「働く意思があること」が必須でしたが、口では何とでもいえます。本当に働く意思があると示すためには、積極的に仕事を探していなければなりません。
簡単にいえば、「仕事を探しているのに仕事がない人」が、失業保険を受け取れます
失業保険はいつからもらえる?
失業保険がもらえる時期は、人によって異なります。雇用保険の基本手当は、離職票の提出と求職の申込みを行った日(受給資格決定日)から数えて7日後からもらえる人もいれば、「3ヵ月もしくは2ヵ月+7日後」から支給される人もいます。
ちなみに、この受給資格決定日から7日間は「待機期間」、3ヵ月もしくは2ヵ月の期間は「給付制限期間」と呼ばれるものです。
失業保険はいつからもらえるのか、受給を早める方法はないのか、ケースごとに解説します。
受給資格決定日から数えて7日から受け取れる人
失業保険の受給資格を満たしている人は、退職日の7日後から失業保険を受け取れます。受給資格について、おさらいしておきましょう。
【失業保険の受給資格】
- 過去2年間で、通算12ヵ月以上雇用保険に加入している
- 働く意思と能力があること
- 積極的に求職活動をしていること
【受給資格決定日の7日後から受給できるケースの一例】
- 期間工として12ヵ月間働き、契約期間の満了で辞めた人
- 過去2年で月11日以上働いていた期間が6ヵ月あり、その後6ヵ月期間工をした人
- 会社都合での退職の人(会社の都合による解雇、倒産など)
受給資格決定日から数えて3ヵ月+7日後から受け取れる人
失業保険の受給資格を満たしていない場合は、3ヵ月間の給付制限期間があります。この間「無収入になる」ということなので、給付を待つより次の仕事に就いてしまった方がいいでしょう。
具体的には、次のようなケースです。
【受給資格決定日の3ヵ月+7日後から受給できるケース】
- 正当な理由なく、契約期間の途中で辞めた人(自己都合による退職、例外あり)
- 契約満了でも、被雇用者期間が12ヵ月に満たない人(例外あり)
- 懲戒解雇(自らの重大な責任による解雇)を受けた人”
受給資格決定日から数えて2ヵ月+7日後から受け取れる人
正当な理由なく、契約期間の途中で辞めた人は、基本的に退職の3ヵ月と7日後から失業保険をもらえます。しかし、次の条件を満たせば、3ヵ月間の給付制限期間が2ヵ月になり、失業保険も退職から2ヵ月と7日後から受け取れるようになります。
【給付制限期間の短縮条件】
- 正当な理由なく自己都合で退職した回数が、過去5年間で1回以内の場合
- その自己都合退職の回数が、令和2年10月1日以降で数えて1回以内の場合
これは、令和2年10月1日に行われた法改正によるものです。そのため、令和2年9月30日までに自己都合退職を何度繰り返していても、10月1日以降に1回以内なら、給付制限期間は短くなります。
ただ、この場合も、2か月7日間は「無収入状態」になるということです。家賃や生活費はかかってしまうので、貯金に余裕がない限りは、早めに次の就職先を見つけたほうが良いでしょう。
受給が早くなる「特定理由離職者」とは?
正当な理由なく自己都合退職をした人」「被保険者期間が12ヵ月未満の人」でも、次のような条件を満たせば、退職7日後から失業保険を受け取れることがあります。この条件に当てはまる離職者を、「特定理由離職者」と呼びます。
【特定理由離職者に当てはまる人の例】
- 自分は契約更新を望んでいたが、会社の都合により更新されなかった人
- 病気や体力不足、妊娠、出産などの理由で、退職せざるを得なかった人
- 家族に病気やケガがあり、介護などのために退職せざるを得なかった人
- 会社の倒産、会社都合による解雇を受けた人 など
このような理由がある人は、ハローワークで手続きをする際、担当者に必ず相談してください。「必ず退職7日後から受給できるようになる」とはいえませんが、受給が早まる可能性はあります。もちろん、相談しなければ受給が早まることもありません。
期間工が失業保険をもらうまでの流れ
期間工が失業保険をもらうには、どのような準備や手続きが必要なのでしょうか。必要な手続きを知らず、準備に時間がかかれば、失業保険の給付もその分遅れます。
【期間工が失業保険をもらうまでの流れ】
こうして流れを見ると、複雑そうに見えるかもしれません。準備すべき書類や、どこで何をすべきなのか、一つひとつわかりやすく解説します。
STEP1.会社に「離職証明書を発行してください」と伝える
期間工の仕事を辞める前に、上司や会社の人に「退職後に、離職証明書を発行してください」と伝えておきましょう。離職証明書とは、その人が会社を辞めたことを証明する書類です。
期間工を募集しているのは大手メーカーばかりなので、いわなくてもきちんと発行してもらえるケースがほとんどでしょう。しかし、後から「発行されていなかった」となっては、受給までの期間が長くなってしまいます。万全を期すために、自分から会社にお願いしておきましょう。
ちなみに、離職証明書と似た書類に「離職票」があります。これらの違いを簡単に説明すると、離職証明書は「会社がハローワークに提出するもの」、離職票は「自分で書いて、ハローワークに提出するもの」です。
離職証明書は3枚の複写式になっています。会社が離職証明書を発行し、ハローワークに提出すると、確認後に「離職票」という部分が戻ってきます。この「離職票」は会社から本人に渡され、次のステップで紹介する「書類の提出」で必要です。
STEP2.ハローワークに書類を提出する
退職したら、必要書類を準備し、ハローワークに提出しましょう。提出する書類は次の通りです。
【ハローワークに提出する書類】
- 離職票-1
- 離職票-2
- 個人番号を確認できる書類
- 本人確認書類(免許証やマイナンバーカードなどの公的で写真付きのもの)
- 印鑑(認印は可、シャチハタなどのスタンプ印は不可)
- 写真2枚、もしくはマイナンバーカード
- 本人名義の預金通帳もしくはキャッシュカード
免許証やマイナンバーカードを持っていない人は、次の書類から2つを持っていきましょう。
【免許証やマイナンバーカードの代わりとなる本人確認書類】
- (国民)健康保険被保険者証
- 住民票の写し、もしくは印鑑証明書
- 児童扶養手当証書 など
STEP3.受給説明会に参加する
必要書類を提出し、手続きを済ませたら「受給説明会」に参加します。この説明会は失業保険(雇用保険制度)について説明するものです。参加すると「雇用保険受給資格者証」と「失業認定申告書」を受け取れます。
説明会に参加するときは、次のものを持って行きましょう。
【受給説明会の持ち物】
- 雇用保険受給資格者のしおり(STEP2の書類提出時にもらえます)
- 筆記用具
- 印鑑
説明会が終わると、「失業認定日」が知らされます。「失業認定」とは、「この人は今、失業状態であると確認できましたよ」という認定のことです。この認定を受けないと、失業保険は受け取れません。
STEP4.求職活動をする
なるべく受給説明会に参加する前から、求職活動を行いましょう。失業保険の受給条件には、「働く意思があること」「積極的に求職活動をしていること」が含まれます。仕事探しをしていないと、ハローワークから働く意思がないとみなされ、失業保険をもらえなくなるかもしれません。
具体的には、次のような求職活動が必要です。
【ハローワークの考える求職活動とは?】
- 求人への応募
- ハローワークが行う、職業相談、職業紹介等を受けたこと、各種講習、セミナーの受講など
- 許可・届出のある民間機関(民間職業紹介機関、労働者派遣機関)が行う、職業相談、職業紹介等を受けたこと、求職活動方法等を指導するセミナー等の受講など・公的機関等((独)高齢・障害・求職者雇用支援機構、地方自治体、求人情報提供会社、新聞社等)が実施する職業相談等を受けたこと、各種講習・セミナー、個別相談ができる企業説明会等の受講、参加など
- 再就職に資する各種国家試験、検定等の資格試験の受験
引用:ハローワーク『雇用保険の具体的な手続き』より
自分で求人誌や求人サイトを見たり、これらから応募したりするだけでは、求職活動と認められないこともあります。ハローワークで紹介された仕事に就くか、ハローワーク以外の場所で求職活動をするかは別として、ハローワークでの仕事探しもしておきましょう。
乱暴にいえば「ハローワークに仕事探しをしているときちんと認定されるために、ハローワークを使った仕事探しもしておこう」ということです。
STEP5.失業保険を受給する
すべての手続きが終わり、準備が整うと、いよいよ失業保険を受給できます。失業保険は「失業認定を受けた日から通常5営業日」かつ、「待機期間や受給制限期間が終わった後」に、指定した預金口座に振り込まれます。
期間工が失業保険をもらうときの注意点
期間工が失業保険をもらうときは、次のようなことに気を付けましょう。きちんとチェックしておかないと、失業保険をもらうのが遅れたり、不正受給とみなされたりするかもしれません。
【期間工が失業保険をもらうときの注意点】
4週間に1度、失業の認定を受ける
これまでの手続きで失業認定を受けても、その後も4週間に1度、失業の認定を受けましょう。指定された日にハローワークに行き、求職活動についての報告をします。 具体的には、「失業認定申告書」に求職活動の状況を記入し、「雇用保険受給資格者証」と一緒に提出します。
退職理由をチェックする
会社から離職票を受け取ったら「退職理由」に何と書かれているかチェックしましょう。契約期間の満了や会社都合による退職でも、「自己都合退職」と書かれているケースがあります。
この場合、ハローワークで自己都合退職ではないこと、契約期間の満了で退職したことなどを伝えてください。何も伝えないままだと、ハローワークは自己都合退職と判断し、受給までの期間が長くなってしまいます。
仕事が見つかったら、ハローワークに報告する
失業保険を受け取っている間に仕事が見つかったら、必ずハローワークに報告してください。報告せず「働いているのに失業保険を受け取っている状態」になると、不正受給とみなされます。
不正受給になると、それ以降の失業保険がすべてもらえなくなります。それだけでなく、これまで支給された失業保険の返還や、賠償金の請求にまで発展しかねません。
次のようなことをしたときは、必ずハローワークに報告しましょう。
- アルバイトや期間工を含む、就職先が決まったとき
- 単発でもアルバイトをしたとき
- 内職や手伝いで賃金が発生したとき
- 開業や独立をしたとき
「期間工→失業保険→期間工…」のループはしない
期間工や失業保険の特性上、「期間工→失業保険→期間工…」のループができます。このループを活用すれば、期間工を挟みながら、働かずにお金をもらう期間を繰り返せます。
しかし、このループには陥らないでください。失業保険ありきでいても、将来困るだけです。職歴はどんどん不利になり、就職に役立つ経験やスキルも身に付きません。
期間工として働いている期間はいいかもしれませんが、失業保険で受け取れる金額はそう多くありません。期間工の給与が高い分、税金もたくさん引かれます。その上、「期間工→失業保険」を一度経験してしまうと、失業保険支給の短縮条件からも外れることになり、3か月以上「無収入状態」になってしまいます。
ただ、失業保険の受給期間中に仕事が決まらなかったり、目標金額に届かなかったりして、もう一度期間工をするのは構いません。2回目の期間工が終わった後に、もう一度、失業保険をもらうのも構いません。
あくまでも、「意図して期間工と失業保険をループするのはやめましょう」ということです。
再就職手当も活用する
失業保険の給付期間が残っている間に仕事が決まると、「再就職手当」が受け取れるかもしれません。受け取れる金額は、残り期間ごとに次の通りです。
【期間ごとの再就職手当の金額】
給付期間が3分の2以上残っている場合:残りの給付金額の7割
給付期間が3分の1以上残っている場合:残りの給付金額の6割
再就職手当の支給条件は「1年を超えて、確実に勤務するであろうこと」が認められることです。期間工として再就業した場合、契約期間は1年未満ですが、メーカー側が「1年を超えるだろう」と認めれば支給されることもあります。
仕事が見つかったときは、まずはハローワークに報告し、再就職手当を受け取れないか相談してみましょう。
本当にもらえる?失業保険に関する口コミ
期間工は失業保険をもらうことができるのか、口コミをチェックしてみましょう。
自動車の期間工って契約満了しても確かすぐに失業扱いになるから
期間工(一年)
↓
失業保険(Nヶ月)
↓
期間工(一年)
↓
失業保険(Nヶ月)
↓
期間工(一年)
↓
失業保険(Nヶ月)って無限ループできるじゃなかったかな?
途中で仕事が無くなる恐れはあるだろうけど。— ellen islay (@ellen_islay) June 12, 2022
期間工と派遣繰り返して失業保険貰ってを繰り返してるおっちゃんがおんねんけど
そういう生き方もあるんだなぁと— べるせ。 (@quanta333) May 21, 2022
何はともあれ、1年の期間工満了からの円満退職だぜ
失業保険も多分即時で出る会社都合だし、3か月はマジで無職謳歌する— クラッド (@kura_x_tudo2020) April 15, 2022
期間工でも失業保険が出るのは、どうやら本当のようです。初めから失業保険をもらうことを考えている人も多く、再就職と繰り返している人もいます。
口コミを投稿している人は、こうして自由な生活を送っていますが、できれば期間工の給料は貯金して、退職後は次のステップへ進みたいところですね。
期間工と失業保険で、新たな人生を踏み出す準備をしよう!
失業保険は「生活の不安に苛まれることなく、新しい仕事を探すための支援金」のようなものです。そして、期間工は多くの人にとって「お金を貯めて、新しい人生への一歩を踏み出すための期間」でしょう。
期間工と失業保険をループするような人生は、たしかに楽かもしれません。しかし、それでは経験もスキルも身に付かないまま、ただ年齢を重ねていくだけです。
それよりもやりたい仕事、活躍できる業界を見つけ、スキルアップを目指しましょう。はじめは期間工ほど稼げないかもしれませんが、昇給や昇進を重ねれば、もっとたくさんのお金をもらえるようになります。生涯賃金も高くなるはずです。
そうはいっても、期間工で目標金額に届かなかった人もいるでしょう。契約更新ができず、志半ばで辞めざるを得なかった人も多いはずです。そんな方は、短期集中でまとまったお金が作れる車体メーカーで、もう一度だけ期間工をするのもいいでしょう。
2022年2月現在、トヨタでは入社翌月末まで在籍していると20万円の特別手当が、3ヵ月の契約期間を満了し、更新するともう20万円の初回更新特別手当がもらえます。
半年も勤めれば、これらの手当と満了金だけで、90万円近く稼げるのです。これなら、短期集中でお金を貯めて、すぐに次の一歩も踏み出すこともできるでしょう。
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